ワクチンデビュー
多くの赤ちゃんが2か月になるとワクチンを受け始めます。ワクチンは様々な病気から赤ちゃんを守る働きを持っています。赤ちゃんは胎児の間にお母さんからもらう免疫(移行抗体)や母乳に含まれる免疫成分などによって病気から守られています。しかし、これらの防御は完全ではありません。
細菌やウイルスの中には肺炎、髄膜炎や脱水症のような重たい病気を起こすものもあります。
そのような病気から赤ちゃんを守るためにワクチンを接種します。
赤ちゃんが2か月をむかえたら、早めにワクチンを受けましょう。早産の赤ちゃんも誕生日から2か月経てばワクチンを受けることができます。
ワクチンには、接種した本人を感染から守る個人防御の意味と、集団の中で病気が蔓延しないようにする集団防御の意味があります。
2か月になったら、ロタウイルスワクチン、五種混合ワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンの4種類のワクチンを接種します。
ロタウイルスワクチンは、飲むタイプのワクチンです。2回接種の「ロタリックス」と3回接種の「ロタテック」がありますが、効果に差はありません。うす甘い味だそうです。飲んだ後、時々下痢がみられます。また、まれに腸重積症(*)という病気になることがあります。
他の3種類のワクチンは注射です。当院では痛みの少ない順に、始めにB型肝炎ワクチン、次に五種混合ワクチン、最後に肺炎球菌ワクチンを接種します。注射したところが赤く腫れることがありますが、たいてい2~3日で治まります。たまに発熱が見られることがあります。
ロタウイルスは胃腸炎を引き起こしますが、新生児や乳児では頻回のおう吐や下痢により脱水症になりやすく、しばしば入院が必要になります。
五種混合ワクチンは、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、Hib(ヘモフィルスインフルエンザ菌b型)の5種類のワクチンを混合したものです。このワクチンは、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオとHibによって引き起こされる病気を予防します。
ジフテリアは、主に鼻やのどなどの気道に感染して起こる病気で、偽膜による気道閉塞や合併症の心筋炎で死亡することがあります。1999年を最後に日本での発生はありません。
破傷風は、土の中に存在する破傷風菌が傷口から体内に入って感染します。菌がつくる神経毒素により全身強直性けいれんが起こります。これは音や光の刺激で容易に引き起こされます。
百日咳は、一続きの咳の後にヒューと大きく息を吸い込む(whoop)症状が特徴的ですが、長引く咳のみのこともあります。乳児がかかると無呼吸発作、呼吸停止がみられることがあります。合併症に肺炎、脳炎、脳症などがあります。
ポリオは、感染した人の100人から1000人に一人ほど発症し、手足に麻痺を起こします。まれに麻痺が残ることがあります。日本では1980年を最後にポリオの発生は見られていません。
Hibによる感染では、肺炎、敗血症、髄膜炎、化膿性関節炎などがみられます。
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌の感染を防ぎます。肺炎球菌によって起こる肺炎、敗血症、髄膜炎、中耳炎などの病気を予防します。
B型肝炎ウイルスワクチンは、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる急性肝炎を予防し、それに続発する慢性肝炎、肝硬変、肝がんを防ぎます。
(*)腸重積症 ワクチン接種10万人あたり5人程度の頻度です。1歳未満の腸重積症の自然発症率は10万人あたり50~100人。腸重積症は、腸の中に腸がもぐりこんでしまう病気です。血液の循環が妨げられ強い痛みがあります。周期的に起こる痛みが特徴的です。おう吐や血便がみられることもあります。早く見つけて整復治療を行えば治ります。