おねしょ・夜尿症

NOCTURIA

おねしょ・夜尿症について

5歳以上の子どもが、1週間に1回以上夜間に尿漏れがあり、それが3か月以上続く場合を夜尿症と言います。7歳児で10%くらいみられますので、めずらしい病気ではありません。

私事ですが、小学校高学年まではおねしょをしていた記憶がありますので、私も夜尿症であったようです。当時は、「夜尿症」を「治療する」という考えはありませんでした。母親も苦労したと思いますが、私も苦労しました。母親にしかられても、寝ている間のことなので私にはどうしようもありません。おねしょをしようとしているわけではありません。後で夢だったとわかるのですが、おしっこをしたくなって、トイレに行って、確かにそこがトイレであることを確認して、おしっこをしたのに布団の中だった、という苦い記憶があります。

ほとんどの人は成長すると夜尿はなくなります。それは、夜間にできる尿の量を減らす抗利尿ホルモンが十分に分泌され、尿をためておく膀胱の容量が大きくなるためです。また、眠っている間でも膀胱が尿で一杯になると、尿意を感じて目が覚め、起きてトイレに行くことができるようになるからです。しかし、夜尿が続いている子どもたちには、抗利尿ホルモンの分泌が少ない、膀胱容量が小さめである、自律神経系が未熟で膀胱が一杯になった時の刺激が覚醒に結びつかない、といった特徴があります。

当院での特徴

悩んでいるお子さま・親御さまに寄り添った治療

夜尿症であっても、昼間にも尿漏れがあったり、一度治っていた夜尿が再びみられた場合は、小児泌尿器科の受診を勧めます。それ以外の夜尿症では、初めに尿検査を行い、腎臓の病気や尿崩症(尿が出すぎる病気)などがないことを確認します。次に生活習慣の見直しをします。

  • おねしょをしてもしからない。
  • 夜中に起こさない。
  • 寝る前に排尿する。
  • 夕食以降の水分摂取量をコップ1杯以内にする。
  • 水分は夕食までに十分とる。
  • 夕食では味の濃いおかずや味噌汁を控える。
  • 夕食時間を早めにする。
  • 便秘がある場合は便秘の治療をする。

生活習慣の見直しをしたら、日記をつけてもらいます。

生活習慣の改善をしてもよくならない7歳以上の子どもには、本人とご家族の希望と意思を聞いたうえで、夜尿症の治療を行います。

治療には、薬物治療とアラーム治療があります。

おねしょ・夜尿症の原因

  • 夜間の尿量が多い

    夜に水分をたくさん取ったり、水気の多い果物などを食べると、夜間の尿量が増えます。夕食後の水分はコップ1杯以内に、夕食後のフルーツを控えるようにしましょう。
    夜間は、脳下垂体から抗利尿ホルモンが分泌され、尿量を少なくしています。小児では、時々抗利尿ホルモンの分泌が少ないために、夜間の尿量が減らないことがあります。

  • 膀胱の容量が小さい

    膀胱の容量が小さいために、夜間に尿をためることができず、漏れてしまうことがあります。成長とともに膀胱の容量も大きくなりますので、漏れることは少なくなります。また、自律神経の未熟性があり、膀胱に一定量尿がたまると、反射的に膀胱が収縮して排尿してしまうこともあります。

  • 尿意を催しても目が覚めない

    大人では尿意を覚えた際には目を覚まし、トイレに行くことが一般的です。こどもは、膀胱に尿がたまっても尿意を感じて覚醒することはほとんどなく、尿が漏れてしまうことは普通のことです。成長とともに、自律神経の働きが成熟すると、尿意を感じて覚醒するようになります。

  • 膀胱や腎臓、脊髄などの疾患

    まれに、膀胱や腎臓、関随の病気で夜尿症の症状がみられることがあります。これらの病気では、昼間の尿漏れが認められることも多いようです。こうした病気が疑われる場合は、小児科や泌尿器科での精密検査が必要ですので、適切な病院を紹介いたします。

おねしょ・夜尿症の治療の原則

起こさない・焦らない・怒らない・叱らない・比べない・ほめる

夜尿症は、親の育て方やこどもの性格によって発症するものではありません。多くの場合成長とともに治っていくものです。夜中に起こすことは抗利尿ホルモンの分泌を妨げますので止めましょう。抗利尿ホルモンの分泌や膀胱容量の増大には個人差があります。ですから、ご兄弟やお友達と比べてこの子は遅いというような見方はしないで下さい。起きている間であれば、おしっこが出そうになったら漏れる前にトイレに行くことができます。しかし、寝ている間に、おしっこを漏らしてパジャマや布団をぬらそうと思ってしているわけではありません。こどもには悪気はありません。不可抗力です。ですから、しからないで下さい。子どもたちも、おねしょをしたら気まずい思いをして、元気がなくなります。おねしょしなかったときは「やったね!」とほめてあげましょう。

おねしょ・夜尿症の治療

年齢別の治療

スクロールできます

おねしょの回数
毎晩 3・4日程度/週 1・2回/週
年中/年長さん 生活習慣の見直し 経過観察 経過観察
小学校1・2年生 治療開始 生活習慣の見直し
治療開始
生活習慣の見直し
小学校3年生以上 治療開始 治療開始 治療開始

夜尿症の治療は、年齢とおねしょの程度を考慮して行います。また、こども本人の希望にも沿うようにします。

治療内容

1生活指導

生活指導を行った場合、約20~30%に症状の改善が認められるといわれています。

生活指導の一例

  • 日中に十分な水分補給をする
  • 夕食後の水分をコップ1杯までにおさえる
  • 便秘を治す
  • 夕食は就寝の2時間前までに済ませる
  • 夕食に味の濃いおかずや味噌汁を出さないようにする
  • 就寝前に必ず排尿する
  • 遅寝を避ける
  • 夜間寝ている間に起こさない
  • 冬は寝ている間に身体が冷えないようにする

2薬物療法

抗利尿ホルモン薬(内服薬)

抗利尿ホルモン薬(ミニリンメルト)内服薬を使います。抗利尿ホルモンは、寝ている間に分泌されるホルモンで、尿を濃縮して量を減らします。夜中の尿量が減れば夜尿も減るはずですが、膀胱が小さいと尿をためることができずに漏らしてしまうこともあります。効果は6割くらいでしょうか。
副作用に、水中毒があります。就寝時に服薬しますが、夕食後の水分摂取がコップ1杯(200ml)を超えた場合は副作用が出ることがありますので、当日の服薬を控えます。薬の効果が認められた場合、ゆっくり減量した方が再発は少ないようです。

その他、抗コリン剤や三環系抗うつ薬、漢方薬などを補助的に使う場合もあります。

3アラーム療法

当院ではアワジテック社の「ピスコール」をレンタルで使ってもらっています。専用のおむつをして、尿が出たらアラームで知らせるというものです。アラームで起こすのは、膀胱が一杯になった瞬間です。脳を刺激することで、膀胱にためられる尿の量が増えたり、尿意を感じて自分で起きたり、夜間の尿量が減ったりします。漏れる前に早めに起こしてトイレでおしっこをさせるのとは違います。効果は、抗利尿ホルモン薬と同じ程度です。当院では、抗利尿ホルモン薬で効果がなかった子どもたちに、アラーム療法を勧めていていますが、割とよい感触があります。驚くほど早く夜尿が見られなくなった子もいます。抗利尿ホルモン薬に比べると、続けることはやや難しいけれど、再発は少ないようです。