予防接種

IMMUNIZATION

予防接種について

江戸時代に麻疹(はしか)は「命定め」といわれており、小さい子どもがかかると命を落とすことが多い病気として恐れられていました。現在日本は麻疹排除国に認定されており、輸入された麻疹の散発的な流行が時にみられることがある程度です。私たちは麻疹の流行をみることがなく、私自身も20年以上麻疹の子どもをみていません。「命定め」と恐れられていた病気は完全に過去のものとなっています。新しい例では他の場所でも書いていますが、細菌性髄膜炎が、ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンの導入によって激減したり、重症のロタウイルス腸炎が、ロタウイルスワクチンによって激減したり、と私たちはワクチンの効果を目の当たりにしてきました。ですから、ワクチンで防げる病気VPD(Vaccine Preventable Diseases)は、ワクチンの接種をしてかからないようにすることが大切だと思います。

当院の特徴

  • 同時接種時の順番

    ワクチン接種時の痛さはワクチンによって異なります。当院では赤ちゃんの声を聞いて、それぞれのワクチンの痛さを教えてもらい、接種する順番を決めています。

  • 針へのこだわり

    当院では細めの27G針を使用しています。太い針よりは痛みが少ないです。また、ワクチン調整時に使用した針は、切れ味が悪くなっていますので、接種時に新しい針に取り替えています。

  • 出張接種

    大学病院などから紹介いただいた患者さんで、定期接種のワクチンやシナジスの接種を患者さんの自宅へ出向いて行っています。当院の診療圏内の患者さんに限らせていただいています。

  • ワクチンの管理

    ワクチンを適切に保管することも重要で、当院ではワクチン専用冷蔵庫と非常用電源を備えています。

当院の予防接種

定期接種

ロタウイルスワクチン

ロタウイルスによる胃腸炎を予防する経口ワクチンです。2回接種の1価ワクチン(ロタリックス)と、3回接種の5価ワクチン(ロタテック)があります。両者の効果に差はないと言われています。副反応で下痢がみられることがあります。当院ではこれまでに経験はありませんが、ごくまれに腸重積が起こることがあります。

ヒブ(Hib)ワクチン

インフルエンザ菌b型(Hib)による感染症を予防します。乳幼児がかかると、肺炎、化膿性髄膜炎、化膿性関節炎、敗血症などの重篤な病気を起こすことがあります。生後2か月から接種可能です。初回接種を3回と追加接種を1回します。

肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌による感染症を予防します。感染は乳幼児に多く、肺炎、化膿性髄膜炎、中耳炎、敗血症などの重篤な病気を起こすことがあります。生後2か月から接種可能です。初回接種を3回と追加接種を1回します。

五種混合ワクチン・四種混合ワクチン

ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオとインフルエンザ菌b型(Hib)感染症の5種類の病気を予防します。四種混合ワクチンにヒブワクチンが加えられたワクチンです。2か月から接種可能です。初回接種を3回と追加接種を1回します。

B型肝炎ワクチン

B型肝炎ウイルスによる感染症、急性肝炎を防ぎます。B型肝炎は慢性化すると、やがて肝硬変となり、最後には肝がんに至ります。生後2か月から接種可能です。3回接種します。

BCGワクチン(結核)

乳幼児が結核にかかることを防ぎます。乳幼児が結核にかかると、結核性髄膜炎や粟粒結核など命にかかわる病気を発症することがあります。通常生後5か月から8か月の間に接種します。

MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)

麻疹と風疹を予防します。小児で麻疹の流行を見ることはありませんが、まれに大学生の間などで流行がみられることがあります。風疹は現在でも所々で流行があります。妊娠20週ころまでの妊婦がかかると、先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれることがあります。1歳から接種可能です。年長児で2回めの接種を行い長期間の免疫を保ちます。

水痘ワクチン

水痘(みずぼうそう)を予防します。今でも時々流行がみられます。治療薬もあり、ほとんどの場合1週間程度で治りますが、まれに脳炎を起こすことがあります。1歳になったら接種できます。通常半年後に2回目の接種をします。

日本脳炎ワクチン

日本脳炎ウイルスに感染した豚やイノシシの血を吸った蚊が媒介する病気です。高齢者に多くみられますが、まれに小児にもみられ、1歳児の例もありました。生後6か月から接種可能です。1期初回接種を2回、通常1年後に1期追加接種を1回、最後に9歳から12歳の間に2期接種を行います。

2種混合ワクチン

ジフテリアと破傷風の追加免疫をつけるためのワクチンです。11歳12歳で接種します。

子宮頸がんワクチン

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって発症する子宮頸がんを予防します。主に9価ワクチン(シルガード9)が使われています。9価ワクチンにより子宮頸がんの80%は予防されます。9価ワクチンは、15歳未満で1回目の接種を行った場合は、6か月後に2回目の接種をします。15歳以上で1回目の接種を行った場合は、2か月後に2回目、6か月後に3回目の接種を行います。
キャッチアップ接種対象者は、平成9年(1997年)4月2日から平成18年(2007年)4月1日生まれの女性で、接種を受けられる期間は、令和7年(2025年)3月までです。

任意接種

おたふくかぜワクチン

ムンプス(おたふくかぜ)ウイルスによっておこる流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)を予防します。おたふくかぜは耳下腺や顎下腺が腫れる病気で、通常1週間ほどで治ります。数パーセントに無菌性髄膜炎が、また、1000人に1人難聴がみられます。海外では麻疹風疹おたふくかぜ(MMR)ワクチンの定期接種が行われていますが、日本ではまだ定期接種になっていません。1歳から接種可能です。通常年長児で2回目の接種を行います。

インフルエンザワクチン

毎年冬に流行するインフルエンザを予防するワクチンです。インフルエンザAとインフルエンザBがあり、通常Aの後にBが流行します。ほとんどの場合1週間ほどで治癒しますが、合併症として熱性けいれんや脳症がみられることがあります。当院では、6か月から8歳までの小児には2回接種を勧めています。

A型肝炎ワクチン

A型肝炎は糞口感染で発症します。衛生状態の悪い地域で流行がみられます。日本で流行がみられることはありませんが、ウイルスで汚染されたカキなどの海産物を食べて感染することがあります。1歳以上で初回接種後、2~4週、24週に計3回接種します。

予防接種のスケジュール

2ヶ月~11ヶ月

スクロールできます

ワクチン 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 11ヶ月
ロタウイルスワクチン(定期) (③)
B型肝炎ワクチン(定期)
肺炎球菌ワクチン(定期)
五種混合ワクチン(定期)
BCGワクチン(定期)
日本脳炎ワクチン(定期) ①②

*五種混合ワクチンは、四種混合ワクチンにヒブワクチンを加えたものです。五種混合ワクチンを接種する場合はヒブワクチン接種の必要はありません。

以上は、あくまで標準的な接種スケジュールです。慢性疾患などで接種の開始が遅れた子供さんや、同時接種に不安を感じておられる方には、子供さんの体調やご両親のご希望に合ったワクチン接種のスケジュールを相談しながら立てていきます。
日本脳炎ワクチンについては、従来3歳からの接種が標準とされておりました。しかし、日本脳炎は3歳までかからない病気というわけではなく、まれではありますが、0歳児、1歳児がかかった例もありますので、接種可能年齢になったら早めに接種した方がよいと考えています。
スケジュール表では、日本脳炎ワクチンは6か月から接種可能であるということを示しています。
当院では、大学病院やデイケア施設などと連携して、在宅療養をしている子供たちに自宅での予防接種も行っています。通常の定期予防接種ワクチン、任意接種ワクチン、シナジスの接種を行っています。

1歳~6歳未満

スクロールできます

ワクチン 1歳 1歳6ヶ月 5~6歳
肺炎球菌ワクチン(定期) 追加
五種混合ワクチン(定期) 追加
日本脳炎ワクチン(定期) 追加
MRワクチン(定期)
水痘ワクチン(定期)
おたふく風邪ワクチン(任意)
ヒブワクチン(定期) 追加
インフルエンザ 毎年10月から12月頃に1回ないし2回接種

インフルエンザワクチンは、6か月以上の小児が接種対象です。毎年10月中頃から接種を開始しています。8歳以下の小児には2回接種を勧めています。
*五種混合ワクチンを接種した場合は、ヒブワクチンを接種する必要はありません。
*四種混合ワクチンを接種している場合は、四種混合ワクチンとヒブワクチンの追加接種をそれぞれの時期に受けてください。

6歳以上

日本脳炎2期接種 9歳から12歳
二種混合ワクチン 11歳、12歳
子宮頸がんワクチン 小学校6年から高校1年の女子
A型肝炎ワクチン 1歳以上で3回接種

ワクチン接種までの流れ

  1. Step01

    ご予約

    電話または直接来院していただき、接種希望日時とワクチンの種類をお伝えください。
    初めての方には、生年月日とワクチン接種歴もお聞きします。

  2. Step02

    来院前のお願い

    接種当日に予診票(母子手帳別冊)が手元にある場合は前もってご記入をお願いいたします。
    予診票の記入が済まれていない方で、接種ワクチンの種類が多い場合は記入に時間がかかりますので、少しお早めにお越しください。体温は院内で測ります。

  3. Step03

    ご来院

    予診票の記入、体温測定が済みましたら、順番に診察室へお呼びします。
    予診票の内容を確認します。体調や服用中のお薬について伺うことがあります。当日接種するワクチンの種類と何回目の接種かを確認します。

  4. Step04

    診察・ワクチン接種

    診察をして、異常がないことを確認しワクチンの接種を行います。

  5. Step05

    接種後

    接種後に、当日の生活の注意点や副反応について説明します。接種後の注意書きをお渡しします。次回の接種を希望される場合は、日にちや時間を決めて予約を入れます。
    帰宅後に、変わったことがありましたら、すぐに連絡をしてください。