便秘
CONSTIPATION
便秘について
最近は便秘の治療をする機会が増えているように思います。少し気になるのは、「うんち」や排便行為への関心が薄れてきているように感じることです。呼吸でも息を吸うだけでなく、はくことも重要なように、食べることと同じように便を出すことはとても大切です。
赤ちゃんの頃から便秘の子もいますが、トイレトレーニングがきっかけで便秘になる場合もあります。来院される子どもたちの中には、「もう1週間便が出ていない」というような子もいます。便秘は命に関わるような病気ではないし、いずれ出るだろうから様子を見ていてもよいのでしょうか?
答えは、もちろん「いいえ」です。
便秘って何なのでしょう?
ご両親は、お子さんの排便に気を配って下さい。3日以上出ていない、また、カチカチ、コロコロのうんちが出ている場合は便秘と考えます。
なぜ便秘が続くのでしょう?
ごはんを食べると、消化された食べ物から栄養分が腸で吸収されます。残ったものがうんちになります。大腸で水分が吸収されて、うんちはかたまりになり、腸の終点、直腸に運ばれます。直腸にうんちが来ると、うんちが来た合図が脊髄や脳へ送られ、排便反射が起こります。脳は排便を促したり、我慢したり、排便の調節をします。
子どもでは、体質、食事内容の偏り、排便をがまんする習慣などで便秘になることがあります。いずれにしても、うんちが直腸に来ても排便されない状態が続くと、排便反射が起こりにくくなります。また、本来常に空っぽであるはずの直腸がたまった便でひきのばされてしまいます。こうして、うんちが出にくい状態がつくられます。
排便を我慢する場合は?
排便はデリケートな行為です。安心できる場所と時間が確保されないとできない場合があります。うんちの時にはおむつを着けて、カーテンの影できばって出すという子どももいます。
安心してうんちできる状況をつくってあげてください。トイレトレーニング中トイレでうんちをすることに抵抗感がある場合は、初めにトイレがこわくない、安心できる場所であることを知ってもらいましょう。うんちをする前に、トイレと仲良しになってもらいましょう。
もう少し大きい子になると、学校や園でうんちをするのがいやで我慢する子どもたちがいます。子どもたちの気持ちもわかりますが、自分の体のためには我慢はよくありません。毎日朝食後に排便して登校登園するのが理想です。ごはんを食べた後は便が出やすいので、そのタイミングでうんちをがんばってみるのもよいでしょう。
便秘チェックリスト
- うんちをするのを嫌がったり、我慢したりする
- 急に強い腹痛が起こるが、治まると普通にしている
- ウサギの糞のような硬いコロコロうんちが出ている
- 一生懸命きばらないとうんちが出ない
- うんちをしたときに出血する
- うんちを出すのに時間がかかる
- 3日以上うんちが出ていない
- いつの間にかパンツが下痢便で汚れている
子どもの便秘の原因
便秘には家族性があると言われており、ご両親に便秘があるとこどもたちも便秘になることが多いようです。ただし、遺伝的なものだけではなく食生活が似ているために便秘になりやすいともいえます。食物繊維を多く含んだ食品の摂取、十分な水分の摂取、体をよく動かすこと、食後の排便習慣の確立などが不十分だと便秘になりやすいといえます。
子どもの便秘はめずらしい?
まれに、肛門や腸の病気で起こる便秘もありますが、その場合は、専門科での治療が必要です。それ以外の便秘を、慢性機能性便秘症と呼びますが、子どもたちの1割くらいにみられるといわれており、めずらしい病気というわけではありません。治療には長期間かかることが多いようです。
便秘の改善のためには「しっかりと排便習慣をつけること」が大切です。小さいうちから習慣づけるようにしましょう。
便秘の治療
当院での便秘の治療
うんちが出ていないときは、まず、浣腸でたまっているうんちを出します。たまたま、便が出なくなった場合には、1回の浣腸でよくなることもあります。が、便秘が続いている場合には、1回浣腸でうんちを出しても、またうんちがたまって元に戻ります。治療の第一は、腸の中にたまっている便をすべて出し切ることから始まります。硬い便をすべて出し切り、最後に軟らかい便や便汁が出てくるまで浣腸します。その後、内服薬の治療を始めます。
便秘の薬には、便を柔らかくしてうんちが出やすくなる薬と、腸を刺激して排便を促す薬があります。酸化マグネシウムやポリエチレングリコール製剤(モビコール)などは、うんちを柔らかくして出しやすくする働きがあります。このタイプの薬を基本に使います。ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)は、腸の蠕動運動を刺激して排便を促します。補助的に使います。それでも出にくい場合は、浣腸も併用します。
便秘になってからの期間が長い場合、とにかく薬を使って便を出す。便をためないようにして、伸びてしまった直腸を治し、低下している排便反射を復活させます。直腸が本来の形と働きを取り戻すと、排便できるようになります。その時に、便の状態を柔らかく出やすいものにしておくと、ほぼ毎日排便できるようになり便秘は治っていきます。もちろん、治療している間に子どもたちが成長して、食べる量が増えたり、運動量が増えたり、腹筋の力がついたりすることも相まって便秘が治っていきます。治療期間は、数か月から数年かかることもあります。気長に頑張りましょう。