アレルギー科
ALLERGY
アレルギーについて
アレルギーは、無害な外来抗原(食物、ホコリ、花粉など)に対する過剰な免疫反応です。
即時型と呼ばれている1型アレルギーでは、抗原摂取後数分から30分ほどで症状が出ます。
喘息、アレルギー性鼻炎、じんましん、薬剤や食物に対するアナフィラキシーなどがその代表です。
アレルギー検査について
当院では、血液検査によるアレルギー検査や鼻汁中好酸球テストを行っています。
血液検査では、アレルギー体質の程度を調べるIgE RIST(非特異的IgE検査)と個々のアレルゲンに対するアレルギーの程度を調べるIgE RAST(特異的IgE検査)をします。
よくあるアレルギー症状
気管支喘息
気管支喘息は、発作的に、咳、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)、呼吸困難の症状がみられ、それを繰り返す病気です。
これらの症状は、気管支が一時的に収縮することによって起こります。ホコリやダニなどのアレルゲン、タバコや花火の煙、冷たい空気などを吸入したとき、かぜを引いたとき、激しい運動をしたとき、天気が悪くなるとき、などに発作が引き起こされることがあります。
小児の喘息は、成人に比べると治りやすいと言われていますが、実際は、半数ほどはよくなり(寛解)、残りの半数は継続的な治療が必要であったり、ある程度の症状が残るようです。重症の喘息(大発作を繰り返し起こす)になると、治りにくい傾向があります。
発作を起こしてから治療するのではなく、発作を起こさないように予防薬を使って、発作のない状態を維持することが大切です。
発作時の治療
β刺激薬の吸入、気管支拡張薬の内服・貼付、程度が強い場合はステロイド内服薬などで治療を行います。改善がない場合は、入院治療が必要です。
非発作時の治療
薬物療法と環境対策があります。
環境対策
最も代表的なアレルゲンであるホコリ・ダニ対策をします。室内の掃除ですが、特に寝室、ベッドや布団の周りの掃除に力を入れて下さい。布団の周りにぬいぐるみなどを置かないようにする、寝る前に布団の上であばれないようにすることも大切です。次に、タバコ、花火、お線香などの煙に注意します。吸い込むと気管支に刺激を与えるもの、冷たい空気なども注意します。運動をすると咳が出やすい場合は、ウォーミングアップをしてから走るようにして下さい。肥満を予防します。
薬物療法
吸入ステロイド薬は、気管支粘膜でのアレルギー性炎症を強く抑え、発作が起こりにくくします。携帯式の吸入器と吸入液を使うネブライザーがあります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬は、気管支平滑筋の収縮を抑え、気管支粘膜の炎症を抑える働きがあります。
これらの予防薬は、長期間継続して使用し発作のない状態を維持します。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹が左右対称にみられる病気です。多くの場合、家族歴にアレルギー性疾患がみられたり、血液中のIgE抗体が高値であったりします。
湿疹は、アレルギー性の炎症と皮膚のバリア機能の異常が合わさって生じると考えられています。乳幼児に発症することが多く、この時期には、顔面から湿疹が始まり、徐々に全身に広がっていきます。幼児期になると、乾燥肌が目立つようになり、湿疹は肘の内側、膝の裏側、手首、足首、首などによくみられるようになります。とびひや水いぼを併発することがあります。
思春期になると、顔面、頚部、上胸部、上背部に湿疹がみられ、ストレスにより悪化しやすくなります。
アトピー性皮膚炎の症状
- かゆみがある
- 赤みがある
- じゅくじゅくすることがある
- 湿疹は軽快増悪を繰り返す
- 体の左右に対称的に湿疹ができる
- 経過が長くなると、皮膚が硬くなる
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因と環境要因とによって起こると考えられています。遺伝的要因とは、ご家族にアレルギー疾患を持つ人がいる場合で、皮膚のバリア機能に異常が認められることがあります。環境要因としては、ダニやハウスダスト、食物などのアレルゲン、物理的刺激(皮膚を掻くことや皮膚がこすれることなど)、汗、細菌、カビ、ストレス、食事習慣などがあります。
治療法
生まれたての新生児期から保湿剤を塗布すると、アトピー性皮膚炎の発症を抑えられるという報告があります。皮膚のバリア機能が低下していると、皮膚でのアレルギー性炎症が引き起こされ湿疹が生ずるので、保湿剤の塗布はアトピー性皮膚炎の予防に効果があるかもしれません。
湿疹の治療には、外用薬と経口薬があります。基本としてステロイド外用薬を使います。ステロイドは皮膚の炎症を抑える薬です。長期間塗り続けると、皮膚の萎縮などの副作用が出ることがありますので、メリハリのある使い方をします。使うときは1日2回塗布して、早く皮膚の状態を良くして、ステロイド休みの日をつくります。皮膚の炎症が治まったら、保湿剤を継続して皮膚の状態の経過をみます。ステロイド外用薬以外に、免疫抑制剤のタクロリムス軟膏、JAK阻害薬のコレクチム軟膏、PDE4阻害薬のモイゼルトなどがあります。かゆみの症状が強い場合などに抗ヒスタミン薬の内服を併用します。
一部の乳幼児では、食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因になっていることがあります。その場合は、食事指導を行います。
じんましん
皮膚に急に赤みある発疹や蚊に刺されたような膨らみが生じ、多くの場合かゆみを伴います。
通常24時間以内に跡形もなく消えます。
6週間以上続く場合は、慢性じんましんと呼ばれます。
じんましんの原因
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特発性じんましん
特発性というのは、じんましんを発症させる原因や誘因が明らかでないものを意味します。急性じんましんは、ウイルスや細菌の感染がきっかけとなって発症することが多いようです。6週間以上続く場合は、慢性じんましんと呼びます。その場合は、原因は不明です。
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特定の刺激や条件で誘発されるじんましん
食物や薬物などに対するアレルギーが原因になるもの以外に、鯖やタケノコの摂取、造影剤やアスピリンなどの薬剤、摩擦などの機械的刺激、寒冷刺激、日光、水、汗などが誘因となって発症します。
じんましんの検査
原因はわからないことが多く、アレルギー検査の有効性は低いと言われています。アレルギー検査が有用であるのは、乳幼児がある食品を食べ始めてじんましんが出た場合で、その食品を再び摂取したときに再度じんましんが認められたような時です。
治療法
第二世代抗ヒスタミン剤を処方します。ほとんどの場合1か月以内に治ります。6週間以上続く慢性じんましんの場合は、抗ヒスタミン剤を継続してもらいます。からだが暖まると、じんましんが出ることがありますので、気をつけて入浴してもらいます。
食物アレルギー
主に乳児期に発症することが多い疾患です。その発症については、二重抗原暴露仮説が提唱されています。食物アレルギーの発症には、経皮感作が重要であると言われています。湿疹や乾燥肌が認められるバリア機能の低下した皮膚から、卵や牛乳や小麦などの食物抗原が体内に入ると、IgE抗体が作られ感作(アレルギーを起こしやすい状態)されます。ですから、保湿剤の塗布は皮膚のバリア機能を改善し、アレルゲンの経皮感作を減らし食物アレルギーの発症を抑えるという報告があります。一方、経口摂取した場合は、感作ではなく、逆に免疫寛容(食物アレルギーが治る)を導く方向に働くとされています。
乳幼児期に発症した食物アレルギーは寛解(食べられるようになる)しやすいが、学童期・成人で発症した食物アレルギーは寛解しにくいといわれています。
小児期以降に見られる特殊な食物アレルギーとして、口腔アレルギー症候群と食物依存性運動誘発アナフィラキシーがあります。口腔アレルギー症候群は、ある食品を食べたときに口の中やのどに刺激感やかゆみを感じます。花粉食物アレルギー症候群(PFAS)とも呼ばれています。シラカバ、ヨモギ、ブタクサなどの花粉のアレルギーを併発していることがよくあります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、ある特定の食物の摂取後に運動をすることによってアナフィラキシーが引き起こされます。食物の摂取のみや、運動のみではアナフィラキシーは起こりません。原因食物は小麦が最も多いです。
食物アレルギーの症状
- じんましん
- 皮膚のかゆみ
- 唇やまぶたなどの腫れ
- 下痢、嘔吐
- 鼻水、咳、喘鳴
- アナフィラキシー
食物アレルギーの検査
当院では、採血をしてアレルギー検査を行いますが、結果の数値よりも、実際に摂取したときの反応の方が重要です。また、検査結果の数値はあくまで目安であって、その食品をどの程度食べることができるか、ということはわかりません。経口負荷試験やプリックテストは行っていません。
食物アレルギーの原因
食物アレルギーは、様々な食物に含まれる糖タンパク(アレルゲン)が原因で起きるアレルギー反応です。現在多くの食物アレルギー原因蛋白が同定されています。生卵の摂取ではアレルギー症状が出るが加熱した卵では出ない、ということはよくありますが、タンパク質は加熱することにより変性してアレルギーを起こしにくくなることがあります。食物アレルギーに似た症状を起こす例として、細菌により産生されたヒスタミンを多く含むサバなどの魚肉摂取によるじんましん、サバなどの寄生虫(アニサキス)によるアレルギー、アセチルコリンを含むヤマイモによる口囲の発赤などがあります。
治療法
ある食品が、未摂取であったり、除去している場合は、数値を参考にして摂取を進めていきます。アナフィラキシーの既往があったり、アレルギー検査の数値が高く、当院や自宅で試すことが危険と判断される場合は、経口負荷試験のできる病院を紹介します。
アレルギー性鼻炎・花粉症
アレルギー性鼻炎は、発作的に出たり繰り返す鼻の症状、くしゃみ、鼻水、鼻づまりがみられる疾患です。
アレルギー性鼻炎は、通年性鼻炎と季節性鼻炎に分けられます。通年性鼻炎は主にダニやハウスダストによって起こります。季節性鼻炎は、主に花粉によって起こります。
花粉症はアレルギー性鼻炎の他に、多くの場合結膜炎や皮膚炎を合併します。
アレルギー性鼻炎の症状
- くしゃみ
- 喉がイガイガする
- さらさらとした鼻水
- 耳の中の閉塞感
- 鼻づまり
- 咳
- 目のかゆみ、充血
アレルギー性鼻炎の原因
アレルギー性鼻炎は、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎に分けられます。通年性アレルギー性鼻炎の原因は、主にハウスダスト、ダニです。季節性アレルギー性鼻炎の原因は、主に花粉です。アレルギー性鼻炎は他のアレルギー疾患と同様にアレルギー素因を持つ人に多くみられます。吸入されたアレルゲンは、鼻粘膜のマスト細胞に結合し、マスト細胞からヒスタミンが放出されます。ヒスタミンは、くしゃみ、水様性鼻汁、鼻粘膜の腫脹(鼻づまり)、かゆみといった症状を引き起こします。
アレルギー性鼻炎の検査
鼻水が続いている場合、鼻汁注好酸球検査を行います。アレルギー性鼻炎の場合は、原因検索のためアレルギー検査を行います。
治療法
環境対策(アレルゲンを避けること)、薬物療法、免疫療法などがあります。まず、アレルゲンへの暴露を減らすために、身の回りのダニ、ハウスダストを減らします。花粉の場合は、飛散時期に花粉への暴露を減らす工夫をします。薬物療法では、第二世代の抗ヒスタミン剤を主に使用します。その他に、受容体拮抗薬を併用することもあります。内服薬の他にステロイド点鼻薬を使うこともあります。免疫療法は、現在ダニとスギ花粉のアレルギーに対する治療が可能です。舌下錠の内服を3年以上続ける治療で、「舌下免疫療法」と呼ばれていますが、当院でも治療を行っております。
舌下免疫療法
舌下免疫療法とは、アレルギー性鼻炎の原因となるスギ花粉、ダニのアレルゲンを毎日舌下錠で服用してアレルギー反応を起こさない体質にする治療法です。鼻炎症状の軽減と抗ヒスタミン剤使用量の減少が期待されます。抗ヒスタミン剤は、人によっては眠気がみられることがあり、学業や仕事のパフォーマンスが低下することがあります。スギ花粉症・ダニアレルギーともに5歳以上が対象です。
皮下投与法との比較
以前のスギ花粉症とダニアレルギーの免疫療法では、アレルゲンを注射する皮下投与法が用いられていました。
舌下免疫療法は皮下投与法と比べて、薬剤投与時の痛みがなく、通院回数が少なく済み、副反応も少ないといったメリットがあります。
治療法
アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が含まれる治療薬を舌の下に1分間保持した後に飲み込みます。初回は院内で内服してもらいアレルギー症状が出ないか30分経過をみます。1週間初期量の内服をして、異常が認められない場合維持量に増量して治療を継続します。治療は、3年ほど継続して効果をみていきます。3年で一旦治療を止めても、数年は効果が続くと言われています。再びアレルギー性鼻炎の症状が出てきた場合は、再度治療をすることができます。また、3年過ぎても、そのまま治療を継続することもできます。スギ花粉とダニの両方の治療を同時に行うこともできます。