言葉の発達
子どもは1歳頃になると言葉を話すようになります。はじめに話す言葉は、「ママ」「パパ」「マンマ」など喃語の延長のような言葉で、その意味がはっきりしないこともあります。その後はどんどん言葉の数が増えていきます。「(いないいない)バー」「ハーイ」「ワンワン」「ネンネ」「バイバイ」「クック」「イタイ」「ブーブー」「アンパンマン」などの言葉を1歳半頃に話すようになります。言葉を覚えて話すには、言葉をつくっている文字を正しく発音する必要があります。
日本語の50音の文字(正確には濁音、半濁音、拗音なども入れると倍くらいになります)には、発音しやすいものと、難しいものがあります。赤ちゃんがはじめに話す言葉のほとんどは、発音しやすい文字でできています。2歳までに発音できる音は、マ行、パ行、バ行、ヤ行、ワ行、ナ行とタテト、ダデドなどです。2~4歳に発音できるようになる音は、カ行、ガ行、ハ行、ジャ行、チャ行とシ、ジ、シャ、チなどです。3歳頃には約1000語を覚えていると言われています。しかし、サ行、ザ行、ラ行とツの音を発音できるようになるのが、4~5歳と言われていますので、言葉を覚えても正しく発音できないまま使っていることがあります。例えば、3歳頃には「ひとつ」を「ヒトチュ」、「らっぱ」を「ダッパ」、「おさるさん」を「オタルタン」、「ざんねん」を「ダンネン」といった言い間違えがしばしばみられます。これらの言い間違えは5歳頃になると、正しい発音ができるようになってなくなります。
言葉は、発音を覚えるだけではなく、当然その言葉が持つ意味も一緒に覚えなければなりません。言葉を話し始める1歳児よりも前のまだ言葉を話せない乳児期に、すでに言葉を聞いて理解する力があるようです。例えば、「マンマですよ。」と言うと食べ物の方を見たり、「パパどこかな。」と言うと父親を探したりします。言葉の意味はどのようにして覚えるのでしょうか。例えば、「ワンワン」という言葉を子どもに教える時、両親は近くにいる犬を指さして「ワンワン」ですよと教えます。これを何回か繰り返すと、子どもは両親が指さしているものを見て、自分たちより少し小さくて、四つ足で歩いている生き物を「ワンワン」というようだと推測します。それに確信が持てると、その生き物は「ワンワン」であると理解します。はじめは、「ワンワン」という言葉を使うとき、必ずしも犬を見て使うのではなく、猫を見ても、兎を見ても「ワンワン」と言います。
しかし、もう少しすると、今度は「ニャンニャン」という言葉を知ります。その時、四つ足で歩く生き物全部が「ワンワン」ではなく、「ワンワン」はその一部で、「ワンワン」ではないものがいることを知ります。犬と猫の見分けがつくまでは、2つの言葉が混同して使われます。少し成長して犬と猫の見分けがつくと、「ワンワン」「ニャンニャン」を正しく使えるようになります。そして他の動物の名前もその動物の特徴とともに覚えていきます。さらに成長して、「イヌ」「ネコ」という言葉を覚えると、それまで使っていた「ワンワン」「ニャンニャン」といった幼児語を使わなくなります。
1歳後半になり言葉の数が50語を超えた頃から、急激に言葉の数が増えていきます。ものに名前があることに気づくこの時期には「これ何?」の質問が繰り返されます。そしてどんどんものの名前を覚えていきます。1日に1~2語新しい言葉を覚えて話すようになると言われています。1歳で3語、1歳半で30語、2歳で300語、3歳で1000語、5歳で2000語と覚える単語の数は増えていきます。名詞だけでなく、動詞や形容詞、副詞、接続詞、助動詞、助詞なども覚えます。それに伴い1歳児の1語文から2歳児の2語文、3歳児の3語文へと文章も複雑になっていきます。
両親が子どもに新しい言葉を教えると、子どもは親のまねをして発音します。間違っているときには、子どもが正しく発音できるまで繰り返し正しい発音を、両親が教えます。こうして正しい発音の言葉を覚えると同時に、その言葉の持つ意味を覚えます。そして、覚えた言葉を自分で使ってみます。正しく使えていれば、親が反応を示してくれたり、褒めてくれたりして知識として定着していきます。子どもたちは、このようなやりとりを繰り返して言葉を習得していきます。